子育て世代にとって、保育園の費用は家計に大きな影響を与える重要な要素です。
認可保育園は入園の競争率が高いものの、費用面では公的な補助があり比較的安価とされていますが、実は、実際の料金は世帯収入や子どもの年齢、居住地域、保育時間などによって大きく異なるのです。
2019年10月からは幼児教育・保育の無償化が始まり、条件によっては保育料が無料になるケースもあります。この記事では、認可保育園の料金相場や決定要因、無償化制度の詳細、さらには費用負担を軽減するための各種支援制度について解説します。
保育園選びに悩む保護者の方や、これから子育てと仕事の両立を考えている方々の参考になれば幸いです。
認可保育園の費用の相場とは
認可保育園とは、国が定めた設置基準(施設の広さ、保育士の数、給食設備など)をクリアし、都道府県知事に認可された保育施設です。公的な補助が入るため、認可外保育施設と比較すると費用が抑えられているのが特徴です。では、実際の費用相場はどのくらいなのでしょうか。
認可保育園の基本的な料金体系
認可保育園の料金は、保護者の所得(住民税の所得割額)に応じて段階的に設定されています。
保育料には、保育サービスの提供に関わる基本的な費用が含まれますが、教材費や行事費などは別途徴収されることが一般的です。また、延長保育を利用する場合には追加料金が発生します。
費用の種類 | 内容 | 備考 |
基本保育料 | 保育サービスの提供に関わる費用 | 所得に応じて決定 |
教材費・行事費 | 教材、遠足、行事参加費など | 園ごとに異なる |
制服代 | 制服や体操服など | 園によっては不要 |
延長保育料 | 30分あたり数百円程度 | 利用者のみ発生 |
地域別にみる認可保育園の費用相場
認可保育園の費用は、居住地域によって大きく異なります。同じ所得水準でも自治体によって保育料に差があるのは、各自治体が独自の補助制度を設けているためです。
例えば、東京都23区の場合、子育て支援策として保育料を全国平均より低く設定している自治体が多くなっています。地域間で差があるため、引っ越しを検討している場合は、移住先の保育料相場も考慮に入れると良いでしょう。
年齢による費用の違い
保育園の費用は、子どもの年齢によっても大きく変わります。一般的に、0〜2歳児の保育料は3〜5歳児よりも高く設定されています。これは0〜2歳児の保育には、より多くの保育士が必要とされるためです。
年齢 | 保育士の配置基準 | 保育料の相場 |
0歳児 | 1人の保育士につき3人 | 高額(保育士が多く必要) |
1〜2歳児 | 1人の保育士につき6人 | 高め |
3〜5歳児 | 1人の保育士につき20人 | 低め(無償化対象) |
保育時間による料金の変動
認可保育園では、保育時間の区分によって料金が異なります。保育時間は、保護者の就労状況などに応じて「保育標準時間」と「保育短時間」の2種類に分けられています。
保育標準時間は、フルタイムでの勤務を想定した区分です。一方、保育短時間は、パートタイム就労などを想定した区分となります。
- 保育標準時間:フルタイム勤務の家庭向け
- 保育短時間:パートタイム勤務の家庭向け
保育短時間の料金は、保育標準時間より約1〜2割程度安く設定されていることが多いですが、これも自治体によって差があります。また、保育時間を超えて延長保育を利用する場合は、別途延長保育料が発生します。
認可保育園料金の決定要因
認可保育園の料金は固定ではなく、いくつかの要因によって決定されます。自分の家庭がどの程度の保育料になるのか、あらかじめ理解しておくことで家計の見通しを立てやすくなります。
要因 | 影響 |
世帯収入 | 所得に応じて段階的に決定(8〜20階層に分かれる) |
子どもの人数 | 第2子は半額、第3子以降は無料(自治体による) |
自治体の政策 | 地域によって保育料の設定が異なる |
保育時間 | 標準時間・短時間で料金が変動 |
延長保育の利用 | 30分単位で追加料金発生 |
世帯収入が保育料に与える影響
認可保育園の保育料において、最も大きな決定要因となるのは世帯の所得です。具体的には、市区町村が算定する住民税の所得割課税額に基づいて保育料が決められます。
所得が高いほど保育料も高くなる累進制が採用されており、自治体によって8〜20段階程度の階層に分けられています。
子どもの人数による減免制度
多くの自治体では、同時に複数の子どもが保育施設などを利用している場合に保育料の軽減措置が適用されます。一般的な軽減措置では、第1子は通常料金、第2子は半額、第3子以降は無料という形が多く見られます。
ここで注意したいのは「カウント対象となる子ども」の範囲です。従来は、同時に保育施設を利用している子どものみがカウント対象でしたが、近年は年齢制限を設けつつも、同時利用でなくても軽減対象とする自治体が増えています。
例えば、東京都では多子軽減の範囲を拡大し、年齢に関わらず最年長の子どもから順に数えて第2子は半額、第3子以降は無料としている自治体も多くあります。これにより、小学生や中学生の兄姉がいる場合でも、保育園に通う弟妹の保育料が軽減される可能性があります。
居住自治体による料金の差
保育料は居住する自治体によって大きく異なる場合があります。これは、自治体ごとに独自の子育て支援策や補助制度を設けているためです。例えば、東京都内でも23区と多摩地域では保育料に差があり、さらに区や市によっても独自の料金体系を採用しています。
地方自治体の中には、子育て世代の流入を促進するために保育料を全国平均より大幅に抑えているところもあります。また、第3子以降の保育料を完全無料化したり、所得制限を緩和したりするなど、独自の支援策を講じている自治体も少なくありません。
引っ越しを検討している場合や、複数の自治体から居住地を選べる立場にある場合は、保育料の差も考慮に入れると良いでしょう。同じ条件でも自治体によって月に数万円の差が生じるケースもあります。
保育時間区分による料金設定
認可保育園の利用にあたっては、保護者の就労状況などに応じて「保育標準時間」と「保育短時間」の2区分が設けられており、料金設定も異なります。この区分は、保護者の就労時間や通勤時間などを考慮して市区町村が認定します。
料金面では、保育短時間の方が保育標準時間より1〜2割程度安く設定されていることが多いですが、自治体によって差があります。ただし、保育短時間認定でも、実際の就労状況によっては延長保育を利用する必要が生じ、結果的に保育標準時間より総額が高くなるケースもあるため注意が必要です。
幼児教育・保育の無償化制度について
2019年10月より開始された「幼児教育・保育の無償化」は、子育て世帯の経済的負担を軽減するための重要な政策です。この制度により、多くの家庭で保育料の負担が大幅に減少しましたが、その適用条件や範囲についてはしっかりと理解しておく必要があります。
無償化の対象となる条件
幼児教育・保育の無償化制度では、子どもの年齢や世帯の所得状況、利用する施設の種類によって対象条件が異なります。基本的な対象条件は以下のとおりです。
3〜5歳児クラスの子どもについては、世帯の所得に関わらず、認可保育所、認定こども園、幼稚園などの利用料が無償となります。
0〜2歳児クラスの子どもについては、住民税非課税世帯のみが無償化の対象となります。ただし、多くの自治体では独自の支援策として、住民税課税世帯であっても保育料の軽減措置を設けています。
- 3〜5歳児:世帯収入に関わらず無償
- 0〜2歳児:住民税非課税世帯のみ無償
無償化の対象外となる費用
無償化の対象は基本的な保育料のみであり、食材料費(給食費・おやつ代)、行事費、制服代、通園送迎費などは無償化の対象外となっています。これらの費用は引き続き保護者の負担となるため、実費として別途徴収されます。
特に注意が必要なのは、3〜5歳児の給食費(副食費)です。無償化以前は保育料に含まれていた副食費が、無償化に伴い実費徴収に変更された施設が多くあります。
ただし、年収360万円未満相当の世帯や、第3子以降の子どもについては、副食費が免除される場合があります。この免除条件も自治体によって異なるため、詳細は居住地の自治体に確認することをお勧めします。
0〜2歳児と3〜5歳児の違い
幼児教育・保育の無償化制度において、0〜2歳児と3〜5歳児では適用される条件に大きな違いがあります。この年齢による違いは、家計への影響が大きいため、しっかりと把握しておきましょう。
3〜5歳児については、世帯の所得に関わらず基本的な保育料が無償となります。一方、0〜2歳児については、住民税非課税世帯のみが無償化の対象です。つまり、一般的な共働き世帯などの住民税課税世帯では、0〜2歳児の保育料は引き続き負担する必要があります。
また、3歳の誕生日を迎えたタイミングで自動的に無償化されるわけではなく、通常は4月の年度切り替え時に年齢クラスが変わることで無償化の対象となります。そのため、年度途中で3歳の誕生日を迎えた場合でも、その年度内は0〜2歳児クラスとして扱われ、翌年度から3〜5歳児クラスとして無償化の対象となることが一般的です。
無償化の申請方法と手続き
幼児教育・保育の無償化を受けるためには、居住地の市区町村に申請手続きを行う必要があります。認可保育所や認定こども園を利用している場合は、入所時の手続きで無償化の申請も兼ねていることが多いですが、施設や自治体によって手続き方法が異なります。
特に認可外保育施設、一時預かり、病児保育、ファミリーサポートセンターなどを利用している場合は、別途「保育の必要性の認定」を受ける必要があります。この認定を受けるには、保護者が就労している、疾病や障害がある、出産前後である、などの条件を満たす必要があります。
申請に必要な書類は、施設の利用契約書、就労証明書、保育の必要性を証明する書類などです。申請期限や必要書類は自治体によって異なるため、早めに居住地の市区町村窓口に確認することをお勧めします。また、無償化の対象となる施設かどうかも事前に確認しておくと安心です。
認可保育園以外の選択肢と料金比較
認可保育園に入園できない場合や、他の選択肢も検討したい場合のために、さまざまな保育施設の料金相場を比較してみましょう。施設の種類によって特徴や料金体系が大きく異なるため、自分の家庭に合った選択ができるよう情報を整理することが大切です。
認可外保育施設の料金相場
認可外保育施設とは、国の認可基準を満たしていない、または認可申請をしていない保育施設のことです。認可外保育施設は認可保育園と比べて一般的に料金が高くなっています。
ただし、認可外保育施設でも、「幼児教育・保育の無償化」の対象となる場合があります。
認可外保育施設の中には、英語教育や特色あるカリキュラムを提供している施設もあり、教育方針に共感して選択する保護者も少なくありません。料金は施設によって大きく異なるため、見学時に詳細を確認することをお勧めします。
企業主導型保育所の費用
企業主導型保育所は、企業が従業員のために設置する保育施設で、認可保育園に準じた料金体系を採用していることが多いです。従業員枠と地域枠があり、従業員枠では企業の補助により認可保育園と同等かそれ以下の料金設定になっていることもあります。
企業主導型保育所も「幼児教育・保育の無償化」の対象となり、3〜5歳児は無償、0〜2歳児は住民税非課税世帯のみ無償となります。ただし、企業や施設によって料金設定が異なるため、利用を検討する際は詳細を確認する必要があります。
企業主導型保育所のメリットは、職場に近い場所にあることが多く、通勤の負担が軽減される点や、同じ企業の従業員同士で子育ての情報交換ができる点などが挙げられます。一方で、転職時に継続利用が難しくなる可能性もある点には注意が必要です。
幼稚園と認定こども園の料金
幼稚園は主に3〜5歳児を対象とした教育施設で、認可保育園と比較すると基本料金比較的安価ですが、教材費や行事費などの実費が別途かかることが一般的です。
認定こども園は、幼稚園と保育所の機能を併せ持つ施設で、保育認定を受けた場合は認可保育園と同様の料金体系となり、教育認定を受けた場合は幼稚園と同様の料金体系となります。
幼稚園の預かり保育(延長保育)を利用する場合、「保育の必要性の認定」を受けていれば、追加で無償化の対象となります。
各施設の料金比較表
保育施設の種類によって料金体系が大きく異なるため、比較表を参考に自分の家庭に最適な選択肢を検討しましょう。
実際の料金は地域や施設、世帯の所得状況によって異なります。また、無償化の適用条件も施設の種類によって異なるため、複数の選択肢を比較検討する際は、無償化後の実質負担額を計算することが重要です。
保育料の負担を軽減する支援制度
保育料の負担は家計に大きな影響を与えますが、様々な支援制度を活用することで軽減できる可能性があります。ここでは、保育料の負担を軽減するための各種支援制度について解説します。
自治体独自の保育料補助制度
多くの自治体では、国の基準に上乗せして独自の保育料補助制度を設けています。例えば、東京都の一部の区では、認可保育園に入れなかった場合に認可外保育施設との差額を補助する「認可外保育施設保育料補助」制度を実施しています。
また、世帯の所得に応じた保育料の減免制度や、多子世帯への軽減措置の拡充なども、自治体ごとに独自に行われていることが多いです。例えば、国の制度では第2子半額、第3子以降無料となる多子軽減について、自治体独自に年齢制限を撤廃している場合もあります。
これらの補助制度は自治体によって名称や内容が異なり、同じ条件でも居住地によって受けられる補助に大きな差が生じることがあります。そのため、住んでいる(または引っ越し予定の)自治体の公式サイトや窓口で、利用可能な補助制度をチェックすることをお勧めします。
多子世帯への軽減措置
子どもが複数いる世帯に対しては、保育料の負担を軽減するための多子軽減制度が適用されます。国の制度では、保育所などを利用する最年長の子どもを第1子とカウントし、第2子は半額、第3子以降は無料となります。
ただし、この国の制度では原則として同時に保育所などを利用している子どものみがカウント対象となります。例えば、小学生の兄と保育園児の弟がいる場合、小学生はカウントされず、保育園児が第1子としてカウントされます。
しかし、多くの自治体では独自に多子軽減の対象範囲を拡大しています。例えば、年齢に関わらず最年長の子どもから数える、小学校3年生以下の子どもをカウント対象とするなど、より多くの世帯が軽減措置を受けられるよう工夫しています。自治体によっては第2子も無料とする手厚い支援を行っているところもあります。
ひとり親家庭への支援
ひとり親家庭に対しては、保育料の負担軽減のための特別な支援制度が設けられています。多くの自治体では、ひとり親家庭や在宅障害児のいる家庭などに対して、保育料の軽減措置を実施しています。
具体的には、通常の世帯よりも低い保育料階層区分が適用されたり、一定の所得以下のひとり親家庭は保育料が無料になったりする場合があります。これらの軽減措置は自治体によって異なるため、詳細は居住地の市区町村窓口に確認することをお勧めします。
また、ひとり親家庭には保育料以外にも、児童扶養手当や医療費助成、JR通勤定期券の割引など、様々な支援制度があります。これらを組み合わせることで、保育料を含めた子育て費用全体の負担軽減が期待できます。
保育料以外の経済的支援制度
保育料の負担軽減に加えて、子育て世帯全体の経済的負担を軽減するための様々な支援制度があります。
主な支援制度としては、児童手当(0〜15歳までの子ども1人あたり月額1万円または1.5万円)、児童扶養手当(ひとり親家庭向け)、特別児童扶養手当(障害のある子どものいる家庭向け)などがあります。また、医療費助成制度も自治体によって充実しており、子どもの医療費が無料または低額で済む場合が多いです。
さらに、税制面での優遇措置として、扶養控除、配偶者控除、寡婦(寡夫)控除などがあります。特に、ひとり親家庭に適用される寡婦(寡夫)控除は、税負担の軽減だけでなく、保育料の算定にも影響するため、該当する場合は必ず申請するようにしましょう。
これらの支援制度は複雑で、自分が対象となるかどうか分かりにくい場合もあります。自治体の子育て支援課や福祉課などに相談し、活用できる制度をきちんと利用することをお勧めします。
まとめ
認可保育園の料金は、世帯の所得や居住自治体、子どもの年齢、保育時間などによって大きく異なります。
保育園選びや費用計画を立てる際は、認可保育園の料金相場を把握するだけでなく、無償化の対象条件や自治体独自の補助制度、多子世帯やひとり親家庭への軽減措置なども確認することが大切です。また、認可外保育施設や企業主導型保育所、幼稚園など、様々な選択肢の料金体系を比較検討することも重要です。
子育てと仕事の両立を支える保育サービスを最大限活用するためにも、自治体の窓口や保育施設に直接問い合わせ、最新かつ正確な情報を得ることをお勧めします。各種支援制度を適切に活用することで、保育料の負担を軽減し、より豊かな子育て生活を実現できるでしょう。要な決断ですので、ぜひこの記事を参考に、納得のいく選択をしてください。
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