管理栄養士国家試験は年々難易度が上がっており、効果的な勉強法の確立が合格への鍵となっています。特に新卒と既卒では合格率に大きな差があり、それぞれの状況に合わせた対策が必要です。
本記事では、最新の試験情報や合格率データに基づき、効率的な学習計画の立て方から科目別の対策法、過去問の活用術まで、管理栄養士国家試験に合格するための実践的な勉強法を詳しく解説します。この記事を参考に、計画的な学習を進めて合格を勝ち取りましょう。
目次
管理栄養士国家試験の最新動向と合格率
管理栄養士を目指すためには、まず試験の現状を正確に把握することが重要です。最新のデータをもとに、試験の動向と合格率について見ていきましょう。
第39回(2025年)試験の合格率と傾向
第39回管理栄養士国家試験(2025年3月実施)の合格率は48.1%でした。受験者16,169名のうち、合格者は7,778名という結果になっています。この合格率は近年の推移を見ると、低い水準にあることがわかります。
試験内容については、基礎栄養学や応用栄養学からの出題が増加傾向にあり、特に臨床栄養学では実践的な知識を問う問題が多く見られました。理論だけでなく、現場での応用力が問われる出題形式が増えていることが特徴です。また、公衆栄養学や給食経営管理論といった実務に直結する分野からの出題も重視されています。
新卒と既卒の合格率の違い
管理栄養士国家試験において、新卒と既卒の合格率には大きな開きがあります。2025年の試験データによると、新卒者の合格率は約80%であるのに対し、既卒者の合格率はわずか約11%となっています。この差は年々拡大傾向にあります。
新卒者が高い合格率を維持できる理由としては、学校での体系的な学習がまだ記憶に新しいこと、学校のサポート体制が充実していること、そして集中して勉強に取り組める環境があることなどが挙げられます。一方、既卒者は実務との両立や学習内容の忘却という壁に直面しがちです。
この合格率の差を踏まえると、既卒の方は特に計画的かつ効率的な学習戦略が必要だといえるでしょう。新卒と既卒それぞれの状況に合わせた勉強アプローチについては、後ほど詳しく解説します。
試験難易度の年次推移
管理栄養士国家試験の難易度は近年上昇傾向にあります。過去5年間の合格率を見ると、以下のような推移となっています。
試験回(年度) | 合格率 |
第35回(2021年) | 64.2% |
第36回(2022年) | 65.1% |
第37回(2023年) | 56.6% |
第38回(2024年) | 49.3% |
第39回(2025年) | 48.1% |
この数字からわかるように、合格率は徐々に低下しており、試験の難易度が上がっていることがうかがえます。特に近年は実践的な問題や複合的な知識を問う問題が増加しており、単なる暗記だけでは対応しきれない傾向にあります。
また、出題傾向としては、最新の栄養指導ガイドラインや食事摂取基準の改定内容、近年注目されている栄養課題に関する問題が増えています。時事的な内容や最新のトピックスをフォローしておくことも重要です。
合格ラインと得点配分
管理栄養士国家試験の合格基準は、「全体の正答率が60%以上であること」と「各分野の正答率が30%以上であること」の2つの条件を満たす必要があります。つまり、200問中120問以上の正解が必要で、かつどの科目も極端に点数が低いとダメということです。
試験の配点は以下のような分布になっています。
- ・社会・環境と健康(公衆衛生学):16問
- ・人体の構造と機能及び疾病の成り立ち(解剖生理学、病理学):26問
- ・食べ物と健康(食品学、調理学):25問
- ・基礎栄養学:14問
- ・応用栄養学:16問
- ・栄養教育論:13問
- ・臨床栄養学:26問
- ・公衆栄養学:16問
- ・給食経営管理論:18問
- ・応用力試験:30問
各科目の配点バランスを考慮した学習計画を立てることが効率的です。特に「人体の構造と機能」「食べ物と健康」「臨床栄養学」は配点が高いため、これらの科目で確実に得点することが合格への近道となります。ただし、得点の低い科目があると不合格になるリスクがあるため、すべての科目をバランスよく学習することも重要です。
管理栄養士国家試験の効果的な勉強計画の立て方
管理栄養士国家試験に合格するためには、計画的な学習が不可欠です。ここでは効果的な勉強計画の立て方について解説していきます。
1年スケジュールの組み方
管理栄養士国家試験に向けた1年間の理想的な学習スケジュールは、大きく分けて3つの期間に分けるとよいでしょう。それぞれの期間で目標を設定し、着実に進めていくことが重要です。
第1期(4月〜8月):基礎固めの期間では、各科目の基本的な知識を網羅的に学習します。この時期は特に教科書や参考書を丁寧に読み込み、基礎概念をしっかりと理解することに重点を置きましょう。毎日2〜3時間の学習時間を確保し、週単位で学習する科目を計画すると効率的です。
- 1. 4月〜5月:基礎栄養学、応用栄養学の基本事項を徹底理解
- 2. 6月〜7月:臨床栄養学、公衆栄養学の基礎を学習
- 3. 8月:食品学、調理学、給食経営管理論の基本を押さえる
第2期(9月〜12月):応用力強化の期間では、基礎知識を前提とした応用問題や過去問に取り組み始めます。各科目の関連性を意識して学習を深め、弱点を把握して重点的に強化することが目標です。1日3〜4時間の学習時間を確保しましょう。
- ・9月〜10月:過去3年分の過去問を解き、弱点を把握
- ・11月〜12月:弱点分野の集中学習と問題演習
第3期(1月〜試験直前):総仕上げの期間では、模擬試験や過去問を繰り返し解き、実戦感覚を養います。時間配分や解答テクニックも意識し、本番さながらの環境で練習することが大切です。可能であれば1日4〜5時間の学習時間を確保し、最終調整を行います。
効率的な学習時間の確保法
限られた時間を最大限に活用するためには、効率的な学習時間の確保が欠かせません。特に仕事や家事と両立しながら勉強する方には、以下のような工夫が効果的です。
- ・通勤電車の中:過去問アプリで問題演習
- ・昼休み:重要な用語や公式の確認
- ・家事の合間:音声教材で耳学習
隙間時間を活用する習慣づくりは、忙しい日常の中でも学習を継続するコツです。通勤・通学時間や昼休み、家事の合間など、短い時間でも積み重ねれば大きな成果につながります。スマートフォンの学習アプリや単語帳を活用すれば、いつでもどこでも勉強できます。
集中力が高い時間帯を見極めることも重要です。人には集中力が最も高まる時間帯があります。自分の場合はいつなのかを把握し、その時間に難しい科目や苦手分野の学習を組み込むと効率的です。朝型の人なら早朝の時間を、夜型の人なら夜間の静かな時間を活用しましょう。
また、学習環境の整備も忘れてはいけません。スマートフォンの通知をオフにする、集中できる場所(図書館やカフェなど)を見つける、適切な明るさと温度を保つなど、集中力を維持できる環境づくりが効率的な学習につながります。週末には長時間のまとまった学習時間を確保し、平日の短時間学習を補完するとよいでしょう。
新卒者向け勉強プラン
新卒者は大学や専門学校での学びが新しいうちに試験に臨めるという大きなアドバンテージがあります。このメリットを最大限に活かした勉強プランを考えましょう。
4年次の前期から計画的に準備を始めることが重要です。授業と並行して国家試験の対策を進めることで、効率よく学習できます。授業で学んだ内容をその日のうちに国家試験の視点で復習し、過去問と照らし合わせて理解を深めるサイクルを作りましょう。
- 1. 授業ノートを国家試験対策用にまとめ直す
- 2. 各科目の重要ポイントをマーカーでチェック
- 3. 週末に過去問を解いて、授業内容との関連を確認
学校のサポート体制を最大限に活用することも新卒者の強みです。多くの養成校では国家試験対策講座や模擬試験、教員による個別指導などが用意されています。これらを積極的に利用し、わからない点はすぐに質問する習慣をつけましょう。また、同級生との勉強会も効果的です。互いに教え合うことで理解が深まります。
新卒者は比較的時間に余裕があるため、基礎から応用まで体系的に学習することができます。基本的な用語や概念の理解から始め、徐々に難易度を上げていく段階的な学習が効果的です。特に実習や卒業研究と並行する時期は時間管理が重要ですので、スケジュール表を作成して計画的に進めましょう。
既卒者向け勉強プラン
既卒者は合格率が低い傾向にありますが、適切な勉強法と強い意志があれば必ず合格できます。効率性を重視した勉強プランを立てていきましょう。
基礎知識の再構築が最優先です。学校を卒業してからの期間が長いほど、基礎知識が薄れている可能性があります。まずは教科書や参考書を使って基本に立ち返り、各科目の土台をしっかりと固めることから始めましょう。特に頻出分野や重要な用語・概念を中心に、効率よく復習を進めます。
- ・1日30分でも良いので毎日コンスタントに学習する
- ・基礎用語集や要点まとめ教材を活用する
- ・イラストや図表を用いた参考書で視覚的に記憶を定着させる
仕事と学習の両立のための工夫も欠かせません。多くの既卒者は仕事をしながら試験勉強を進めることになります。限られた時間を有効活用するためには、スキマ時間の活用と優先順位の明確化が重要です。例えば、通勤時間に暗記カードを見る、昼休みに問題集に取り組む、休日にまとまった時間で苦手分野を集中的に学習するなどの工夫が効果的です。
また、過去問題を効率的に活用することも既卒者には特に重要です。限られた学習時間の中で過去問から出題傾向を把握し、重点分野を見極めることが合格への近道となります。過去5年分程度の問題を繰り返し解き、苦手な分野や間違えやすい問題を重点的に復習するサイクルを作りましょう。模擬試験も定期的に受けて、実力を客観的に評価することが大切です。
管理栄養士国家試験で重点的に学ぶべき科目と対策
管理栄養士国家試験では、各科目の特性を理解し、効率的に学習することが合格への近道です。ここでは科目ごとの対策法を詳しく解説します。
各科目の出題傾向と配点
管理栄養士国家試験は9つの科目から出題されますが、各科目の配点と特徴を把握することで、効率的な学習計画を立てることができます。
科目名 | 配点 | 内容 |
社会・環境と健康 | 16 | 社会構造や環境問題と栄養の関連性を問います。食品の安全保障、環境負荷、持続可能な食生活、地域資源の活用、栄養政策と法規制の理解が必要です。社会的視点からの栄養問題を考える力が求められます。 |
人体の構造と機能及び疾病の成り立ち | 26 | 高配点の科目であり、解剖生理学、生化学、病理学の基礎知識が中心です。単純な知識問題だけでなく、臨床栄養学と関連させた応用問題も増加しています。主要臓器の機能、代謝経路、疾患のメカニズムについて深い理解が必要です。 |
食べ物と健康 | 25 | 食品学、調理学、食品衛生学の知識が問われる高配点科目です。食品成分の特性や調理による変化、安全性に関する問題が中心で、近年は食品表示法や食品添加物、機能性表示食品に関する法規制問題も多く出題されています。 |
基礎栄養学 | 14 | 栄養素の生理的役割や代謝、消化吸収の仕組みなど、栄養学の基礎理論を問う科目です。微量栄養素やエネルギー代謝、栄養素の相互作用についての知識が求められます。実験結果の解釈や基礎研究の知識も含まれます。 |
応用栄養学 | 16 | 調理技術の基礎や食品の加工・保存方法に関する知識が中心です。食品の物理・化学的変化、栄養成分の損失防止、衛生管理、調理器具の使用法などが出題されます。実践的な調理手順の理解も必要です。 |
栄養教育論 | 13 | 食品の構成成分や特徴、製造過程、品質管理について問われます。各種食品の分類や特性、保存方法、変質防止の技術など幅広く扱われています。食品表示や法規制との関連問題もあります。 |
臨床栄養学 | 26 | 実務に直結する重要科目で、疾患の病態と栄養管理、栄養アセスメント、栄養ケアプロセスが多く問われます。糖尿病、腎臓病、肝臓病など主要疾患の栄養管理について詳細な知識が必要で、NCPやASOPEN、NSTに関する問題も増加傾向です。 |
公衆栄養学 | 16 | 地域や集団を対象とした栄養管理の基礎知識を問う科目です。食育、健康増進、生活習慣病予防、環境衛生、公衆衛生政策など幅広いテーマが出題されます。統計データの読み取りや疫学的手法の理解も重要視されています。 |
給食経営管理論 | 18 | 食品の安全確保に関する基礎知識を問う科目です。微生物学的知識や食中毒予防、衛生管理、HACCPの考え方、食品の検査方法などが重要テーマです。法令遵守に関する問題も増えています。 |
応用試験 | 30 | 知識だけでなく、実際の栄養管理現場での判断力や問題解決能力を評価する試験です。事例問題やケーススタディを通じて、実践的な対応力やコミュニケーション能力が問われます。近年の試験では、チーム医療や多職種連携の視点も重視されています。 |
得点源にすべき科目
限られた学習時間の中で効率的に点数を稼ぐためには、得点源とすべき科目を見極めることが重要です。
基礎栄養学は最も確実に得点できる科目の一つです。栄養素の基本的な働きや代謝経路など、比較的覚えやすい内容が多く、しっかり準備すれば高得点が期待できます。特に三大栄養素(糖質、脂質、タンパク質)の代謝や各種ビタミン・ミネラルの機能と欠乏症は頻出ですので、徹底的に押さえておきましょう。
応用栄養学もパターン化された問題が多いため、得点源になりやすい科目です。ライフステージ別の栄養管理や食事摂取基準の活用方法を中心に学習を進めることで、安定した得点が可能です。特に妊婦・授乳婦、乳幼児、高齢者の栄養管理に関する問題は毎年のように出題されます。
給食経営管理論は計算問題が多く、解法をマスターすれば確実に得点できる科目です。大量調理施設衛生管理マニュアルの内容や、食材発注量の算出、人員配置の計算などの定型問題が多いため、解法パターンを覚えておくことで高得点を狙えます。また、比較的配点が少ない(15問)ため、効率的に学習できるのもメリットです。
苦手科目の克服法
多くの受験生が苦手とする科目がありますが、適切なアプローチで克服することが可能です。
人体の構造と機能は暗記量が多く苦手意識を持ちやすい科目ですが、体系的な理解が重要です。臓器ごとの機能や代謝経路を単独で覚えるのではなく、体全体のシステムとして関連付けて理解すると記憶に定着しやすくなります。図や表を活用した視覚的な学習や、自分で図解してまとめる方法が効果的です。
臨床栄養学は幅広い疾患の知識が必要で難しく感じる方が多いですが、疾患ごとに「病態→栄養アセスメント→栄養ケア計画→モニタリング」というプロセスで整理すると理解しやすくなります。主要疾患から学習を始め、徐々に範囲を広げていくアプローチが有効です。また、実際の症例を想定しながら学ぶことで、知識が定着しやすくなります。
公衆栄養学は政策や制度の変更が頻繁にある科目です。最新の健康づくり施策や栄養調査データなど、時事的な内容を押さえることが重要です。厚生労働省のウェブサイトや各種白書などから最新情報を収集し、過去の傾向と比較しながら学習を進めると効果的です。重要な数値(健康日本21の目標値など)は確実に覚えておきましょう。
実力を伸ばすための科目別勉強法
各科目の特性に合わせた勉強法を実践することで、より効率的に実力を伸ばすことができます。
基礎栄養学は代謝経路の理解が鍵です。単に経路を暗記するのではなく、各反応の意味や調節機構まで理解することが重要です。例えば、「解糖系」と「クエン酸回路」の関連性や、飢餓時と食後での代謝変化の違いなど、栄養素代謝の全体像を掴むことで応用問題にも対応できるようになります。代謝マップを自分で書いて覚える方法も効果的です。
食べ物と健康は実験・実習の知識と結びつけるとよいでしょう。例えば、「でんぷんの糊化」「タンパク質の変性」などの食品成分の変化を、実際の調理現象と関連付けて理解することで記憶に定着します。また、食品成分表を活用した演習問題にも取り組み、実践的な知識を身につけましょう。
栄養教育論は理論と実践を結びつけることが重要です。行動変容理論や栄養カウンセリング技法などの理論的な内容を、実際の栄養指導場面を想定しながら学ぶと理解が深まります。ライフステージ別や疾患別の栄養教育のポイントを整理し、事例を通して学習することも効果的です。ロールプレイングなどの実践的な方法も取り入れるとよいでしょう。
臨床栄養学は病態の理解を軸に学ぶことが重要です。単なる疾患名の暗記に留まらず、病気の成り立ち(病態)とその栄養管理の目的・方法をセットで理解することが合格への近道です。例えば、糖尿病ではインスリンの働きと血糖調節の仕組みを押さえ、具体的な栄養指導内容や食事療法の根拠を紐づけて学習しましょう。実際の症例を使った問題演習や、臨床現場でよく用いられる栄養評価法(BMI、血液検査値の解釈など)にも慣れることが実力アップにつながります。
公衆栄養学は統計や疫学の基礎をしっかり身につけることがカギです。疫学調査の種類やデータの読み解き方、健康増進や疾病予防に関わる行政施策の概要を理解する必要があります。統計用語や計算問題も出題されるため、苦手な場合は基礎から丁寧に復習しましょう。さらに、地域の健康課題に対する栄養対策や食品安全に関する法律・制度も押さえ、社会的背景を踏まえた視点で学習すると応用力が高まります。過去問で行政の施策名や法律名を確実に覚えることも重要です。
管理栄養士国家試験の過去問活用術
管理栄養士国家試験合格への最短ルートは、過去問を効果的に活用することです。ここでは過去問の戦略的な使い方について詳しく解説します。
過去問の効果的な使い方
過去問は単に解くだけでなく、戦略的に活用することで学習効果を最大化できます。適切なタイミングと方法で取り組みましょう。
基礎学習と並行して過去問に触れることが大切です。各科目の基本知識を学んだ後、その科目の過去問を解くことで、理解度をチェックし、出題傾向を掴むことができます。この段階では正解不正解よりも、出題されるテーマや問われ方に注目しましょう。
このとき、間違えた問題を徹底的に分析する習慣をつけましょう。単に正解を確認するだけでなく、なぜ間違えたのか、どのような知識が不足していたのかを分析することが重要です。間違えた問題は別にノートに整理し、定期的に見直すことで弱点を克服していきましょう。特に複数回間違えた問題は、理解が不十分な分野を示しているため、関連する基礎知識から見直すことが効果的です。
過去問を繰り返し解くことも重要です。同じ問題でも、学習の進度によって見え方が変わります。基礎学習の段階、応用学習の段階、総仕上げの段階と、異なる学習フェーズで同じ過去問に取り組むことで、理解を深めることができます。特に直近3年分の過去問は、試験直前期に3回程度は繰り返し解くことをおすすめします。
出題頻度の高いテーマと問題
過去の出題傾向を分析すると、特に頻出するテーマや問題のパターンが見えてきます。これらを重点的に学習することで、効率的に得点力を高められます。
基礎栄養学の頻出テーマとしては、エネルギー代謝(ATP生成、TCA回路など)、タンパク質・アミノ酸代謝、ビタミンの機能と欠乏症が挙げられます。特に水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンの違いや、補酵素としての働きに関する問題は毎年のように出題されています。
臨床栄養学では特定の疾患についての出題が多い傾向があります。糖尿病、腎臓病、肝臓病、心臓病の病態と栄養管理は必ず押さえておくべきです。また、栄養アセスメントの方法(SGA、身体計測、臨床検査値の評価など)や経腸栄養・静脈栄養に関する問題も頻出します。
応用栄養学ではライフステージ別の栄養管理に関する問題が多く出題されます。特に妊婦・授乳婦の栄養必要量、乳児の栄養摂取と発育、高齢者の栄養問題(サルコペニア、フレイルなど)については詳細に学んでおく必要があります。また、日本人の食事摂取基準の最新版の内容も必須です。
解き方のテクニックと時間配分
本番の試験で実力を発揮するためには、問題の解き方のテクニックと効果的な時間配分が重要です。
マークシート方式の特性を理解することで、効率的に解答できます。選択肢から明らかに誤っているものを消去していく方法は、確信が持てない問題に対して有効です。また、似たような選択肢がある場合は、微妙な表現の違いに注目することで正解を見つけやすくなります。
時間配分の目安は、1問あたり約1分です。試験時間は午前2時間25分、午後2時間40分の合計5時間5分で、問題数が多いため、すべての問題に同じ時間をかけていては終わらない可能性があります。午前、午後それぞれ以下のような時間配分を意識しましょう。
- 1. 最初の約30分:得意科目の問題を解く(確実に得点するため)
- 2. 次の約2時間:未解答の問題を順番に解いていき、手早く回答を進める。未解答の問題を順番に解いていく
問題の読み方も重要な技術です。設問文をよく読み、何を問われているのかを正確に把握することが大切です。「最も適切なのはどれか」「誤っているのはどれか」など、問われ方によって解答戦略が変わってきます。また、問題文に含まれるキーワードに注目することで、素早く解答の手がかりを見つけられます。
模擬試験の活用方法
模擬試験は、実力の客観的な評価と本番の試験に向けた準備として非常に有効です。効果的に活用しましょう。
模擬試験を受ける最適なタイミングは、基礎学習がある程度完了した後、そして本番の1〜2ヶ月前の2回が理想的です。1回目の模擬試験では現状の実力を把握し、弱点分野を特定するための材料として活用します。2回目の模擬試験では、学習の成果を確認し、本番に向けた最終調整のポイントを見つけます。
模擬試験の結果を詳細に分析することで、効果的な学習計画の修正が可能になります。科目別の正答率や、間違えた問題のパターンを確認し、残りの学習期間で重点的に取り組むべき分野を明確にしましょう。特に、本番の試験で合格ラインに達するために必要な得点が取れていない科目は優先的に対策します。
- ・得点率60%未満の科目は重点的に復習する
- ・間違えた問題の類似問題を集中的に解く
- ・時間配分の不足があれば、解答スピードを上げる練習をする
本番と同じ条件で模擬試験に臨むことも重要です。同じ時間帯に、5時間5分という長時間集中して問題を解く経験をしておくことで、本番での集中力の維持や疲労対策に役立ちます。また、実際の試験会場と同様の環境(静かな場所、適切な照明、時計を見える位置に置くなど)を整えることで、より本番に近い形で実力を試すことができます。
管理栄養士国家試験合格者の体験談と実践的アドバイス
実際に試験に合格した先輩たちの経験から学ぶことは、合格への近道です。ここでは合格者の体験談と実践的なアドバイスをご紹介します。
新卒合格者の勉強法
新卒で管理栄養士国家試験に合格した方々の勉強法には、共通するポイントがあります。効率的な学習方法を参考にしましょう。
授業を国家試験対策として活用することが、新卒合格者の多くが実践していた方法です。授業で学んだ内容をその日のうちに復習し、国家試験の視点でノートにまとめ直すことで、効率的に知識を定着させていました。特に実習や演習の内容は、実践的な問題として出題されることが多いため、しっかりと理解しておくことが重要です。
- ・授業ノートを科目ごとにファイリングし、索引をつける
- ・授業で理解できなかった点は、その日のうちに教員に質問する
- ・定期試験の勉強を国家試験対策と連動させて効率化する
早い段階から過去問に取り組む習慣も、新卒合格者に共通していました。3年次から週末を利用して過去問を解き始め、出題傾向や問われ方に慣れておくことで、試験直前の負担を軽減していました。また、間違えた問題や理解が不十分な分野は付箋やマーカーでチェックし、定期的に見直す習慣をつけていた合格者が多いようです。
グループ学習を効果的に活用する方法も有効です。新卒合格者の多くは、仲間との勉強会や情報共有を通じて、モチベーションを維持していました。特に苦手分野を得意とする友人から教わることで理解が深まったり、自分が教えることで知識が定着したりする効果があります。また、模擬試験の結果を共有し、弱点を補い合うことも効率的な学習につながります。
既卒合格者のリベンジ戦略
一度不合格を経験した既卒者が、リベンジに成功した戦略には学ぶべき点が多くあります。
前回の試験で間違えた問題を徹底分析することが、リベンジ成功者の第一歩でした。不合格だった原因を客観的に分析し、自分の弱点や学習方法の問題点を明確にすることで、効果的な学習計画を立てることができます。特に、各科目の得点状況や、間違えたパターンを分析することが重要です。
- 1. 科目別の得点率を確認し、弱点分野を特定する
- 2. 間違えた問題を分類し、共通する知識の不足を把握する
- 3. 前回の学習方法の問題点(時間配分、教材選び、モチベーション維持など)を反省する
仕事と勉強の両立のための工夫も、既卒合格者のリベンジ成功の鍵でした。多くの方が、限られた時間を最大限に活用するための工夫を凝らしていました。例えば、通勤時間を活用したり、昼休みに問題集に取り組んだり、週末にまとまった学習時間を確保したりするなど、日常生活の中に学習を組み込む工夫が効果的だったようです。
効率的な教材選びと学習方法の見直しも重要なポイントです。前回の試験勉強で効果が薄かった教材や学習方法を見直し、自分に合った効率的な学習スタイルを確立することが、リベンジ成功のカギとなりました。特に、要点をまとめた参考書や、解説が詳しい問題集など、短時間で効率よく学べる教材を選ぶことが重要です。また、スマートフォンのアプリや音声教材など、移動時間や家事の合間にも学習できるツールを活用した方も多いようです。
直前期の効果的な過ごし方
試験直前の2週間〜1ヶ月間の過ごし方は、合否を大きく左右します。最終調整のポイントを押さえましょう。
弱点補強と得意分野の確認のバランスが重要です。試験直前期は、新しい範囲を広げるよりも、これまでの学習内容を確実に定着させることに重点を置きましょう。弱点分野の集中的な復習と、得意分野の最終確認をバランスよく行うことが効果的です。具体的には、1日の学習時間の7割を弱点補強に、3割を得意分野の確認に充てるとよいでしょう。
過去問の総復習と時間配分の練習も欠かせません。直前期には、特に直近3年分の過去問を時間を計って解く練習をしましょう。本番と同じペースで問題を解く感覚を身につけることで、試験当日の時間配分がスムーズになります。また、間違えやすい問題や忘れやすい知識を最終確認することも重要です。
体調管理とメンタルケアも試験直前期の重要なポイントです。十分な睡眠と規則正しい生活リズムを維持し、体調を整えましょう。また、適度なリフレッシュ時間を設けることで、メンタル面の安定も図ります。試験に対する不安や緊張は誰にでもありますが、これまでの学習の成果を信じ、自分を励ますポジティブな言葉をかけることも大切です。
試験当日の心構えとコンディション管理
試験当日は、これまでの努力を発揮する大切な日です。万全の状態で臨むためのポイントを確認しましょう。
前日の過ごし方と当日の準備が重要です。試験前日は無理な学習は避け、早めに就寝して十分な睡眠を取りましょう。当日の朝は、消化の良い食事をとり、体調を整えることが大切です。また、試験会場への行き方や所要時間を事前に確認し、余裕を持って出発することで、不要なストレスを避けることができます。
試験中の集中力の維持も合格への重要なポイントです。3時間30分という長時間の試験では、集中力の維持が課題となります。30分ごとに深呼吸をする、目を閉じて一瞬リラックスするなど、自分なりのリフレッシュ方法を持っておくとよいでしょう。また、難しい問題に固執せず、一度飛ばして後で戻る柔軟さも大切です。
緊張や不安を和らげるテクニックも覚えておくと役立ちます。試験直前や試験中に緊張が高まったときは、深呼吸を数回繰り返す、肩の力を抜いて姿勢を正す、「これまでの努力が実を結ぶ」などのポジティブな言葉を心の中で唱えるなどの方法が効果的です。また、試験会場に入る前の待機時間は、周囲の受験生の会話に影響されないよう、自分の世界に集中することも大切です。
まとめ
管理栄養士国家試験に合格するためには、最新の試験動向を把握し、自分の状況に合わせた効果的な勉強法を実践することが重要です。特に新卒者と既卒者では合格率に大きな差があるため、それぞれの状況に合った対策が必要となります。
効率的な学習計画の立て方では、1年スケジュールを基礎固め・応用力強化・総仕上げの3期に分け、計画的に進めることがポイントです。新卒者は学校のサポート体制を最大限に活用し、既卒者は仕事と両立しながら効率的に学習を進める工夫が必要です。
管理栄養士国家試験合格に向けての道のりは決して平坦ではありませんが、この記事で紹介した勉強法と対策を実践することで、合格への可能性は大きく高まります。自分を信じて、計画的に学習を進めていきましょう。
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