目次
1.はじめに
妊娠初期に十分な葉酸(ビタミンB₉)をとると、胎児の神経管閉鎖障害※のリスク低減につながることが広く知られています。日本人の食事摂取基準(2020年版)では、妊娠可能な女性は +240 µg、妊娠中は合計 480 µg/日 の摂取が推奨されています。
しかし実際には、忙しさやつわりで食生活が偏りがち。そこで本記事では、「手軽」「作り置きできる」「栄養バランスも◎」 にこだわった葉酸リッチメニューを、モデル1日献立と3つのレシピに分けてご紹介します。
※神経管閉鎖障害:二分脊椎や無脳症などを含む先天異常。妊娠初期(妊娠4〜5週頃)に神経管が閉じる際、葉酸が不足していると発生リスクが高まる。
2. 葉酸が妊婦さんに必要な理由

効果 | 具体的メリット |
DNA合成のサポート | 胎児の細胞分裂を円滑に進め、先天異常リスクを低減 |
赤血球の合成 | 妊娠中に増える血液量をサポートし、貧血を予防 |
ホモシステイン低減 | 高ホモシステイン血症が関連する動脈硬化リスクを軽減 |
3. 葉酸を効率良くとるポイント

- 「生+加熱」をミックス
- ほうれん草やブロッコリーは加熱でかさが減り摂取量アップ。
- アボカドや柑橘類は生食でビタミンCも同時に補給。
- ビタミンB₆・B₁₂、鉄もセットで
- 葉酸代謝を助けるので、赤身肉・魚・卵を適量プラス。
- サプリメントの過信は禁物
- 食事で 240 µg、サプリで +240 µg が目安(医師の指示がある場合を除く)。
4. 葉酸リッチ食材ベスト10(100 gあたりの目安)

食材 | 葉酸量 (µg) | ワンポイント |
茹で枝豆 | 260 | つわり期でも食べやすい塩ゆでが◎ |
焼きのり | 190 | 味噌汁やおにぎりにプラス |
茹でほうれん草 | 140 | 下茹でして冷凍すれば1ヵ月保存可 |
レンズ豆(乾→茹で) | 120 | 煮込みでホクホク食感 |
ブロッコリー(茹で) | 120 | 電子レンジ加熱で損失最小 |
アボカド | 84 | 良質脂質も同時に補給 |
ボイルあさり | 80 | 鉄とB₁₂も豊富 |
キウイ | 66 | ビタミンCで吸収率アップ |
オレンジ | 34 | 水溶性食物繊維も◎ |
全粒粉パン | 30 | 毎朝のトーストで無理なく |
5. 1日モデル献立(計 約500 µg)

食事 | メニュー | 葉酸量(µg) |
朝 | 全粒粉トースト+アボカド1/2個&チーズ、キウイ1個、牛乳 | 160 |
昼 | レシピ① レンティル&トマトの和風ミネストローネ+焼きのりおにぎり | 190 |
おやつ | オレンジ1個 & 無糖ヨーグルト | 40 |
夕 | レシピ② ほうれん草とひよこ豆のキッシュ、レシピ③ ブロッコリーとあさりのガーリックソテー、もち麦ごはん | 130 |
合計 | ≈520 µg |
6.管理栄養士おすすめ! 糖尿病患者向けバランス食レシピ
レシピ①:レンティル&トマトの和風ミネストローネ

葉酸:約150 µg/食塩1.1 g/エネルギー180 kcal(1人分)
材料 | 分量 |
レンズ豆(乾) | 60 g |
ホールトマト缶 | 200 g |
玉ねぎ・にんじん | 各1/4個 |
だし汁 | 400 mL |
醤油(減塩) | 小さじ1 |
オリーブ油 | 小さじ2 |
- レンズ豆は洗って15分下茹で。
- 鍋にオリーブ油を熱し、刻んだ玉ねぎ・にんじんを炒める。

- だし汁、トマト缶、レンズ豆を入れ20分煮る。醤油で味を調える。

レシピ②:ほうれん草とひよこ豆のキッシュ(パイ生地不使用)

葉酸:約120 µg/鉄3.2 mg/エネルギー210 kcal(1/4切れ)
材料 | 分量 |
ほうれん草(茹でて刻む) | 120 g |
ひよこ豆(水煮) | 80 g |
卵 | 3個 |
無調整豆乳 | 150 mL |
ピザ用チーズ | 40 g |
塩・こしょう | 各少々 |
- 耐熱皿にほうれん草とひよこ豆を敷く。

- 卵を溶き豆乳・塩こしょうを混ぜ注ぎ、チーズをのせる。

- 180 ℃オーブンで25分焼く。粗熱が取れたら4等分。
レシピ③:ブロッコリーとあさりのガーリックソテー

葉酸:約70 µg/タンパク質11 g/エネルギー140 kcal(1人分)
材料 | 分量 |
ブロッコリー(小房) | 150 g |
あさり(むき身・ボイル) | 100 g |
にんにく | 1片 |
オリーブ油 | 小さじ2 |
白ワイン | 大さじ1 |
塩・黒こしょう | 各少々 |
- フライパンでオリーブ油とにんにくを熱し香りを出す。
- ブロッコリーを軽く炒め、白ワインを加えふたをして2分蒸す。

- あさりを加え、塩こしょうで味を調える。

7.まとめ
- 「妊娠中の葉酸摂取は、お腹の赤ちゃんの健やかな発育だけでなく、ママご自身の健康維持にも欠かせません。日々の食事で「野菜・豆・海藻・果物」を意識し、ビタミンB₆・B₁₂・鉄もバランス良く取り入れましょう。特に、つわりや忙しさで食事が不規則になりがちな時期には、作り置きできるスープやキッシュが大きな味方になります。今回紹介したモデル献立やレシピを、毎日の食卓作りにぜひご活用ください。
監修管理栄養士/村中一帆

病態栄養専門管理栄養士として、生活習慣病予防や疾患を抱える患者さんへの個別栄養指導に多数従事。病院での実践経験を活かし、妊婦さんや子育て世代向けのレシピ開発や執筆活動も行っています。noteマガジンやSNSでは、栄養・健康・ライフスタイルに関する情報や、ご飯を中心としたマインドフルイーティングについても発信中。忙しい毎日でも続けやすい、手早く栄養豊富なメニュー提案が得意です。