目次
1.はじめに
動物性食品を一切とらないヴィーガン食は、環境負荷の低減や動物福祉の観点で注目されています。その一方で、不足しやすい栄養素を意識的に補わないと健康を損なうリスクもあります。
本記事では「植物性100%でもしっかり栄養を満たす」ことをテーマに、管理栄養士が欠けがちな栄養素を網羅するポイントと、手軽に作れるヴィーガンレシピをご提案します。
2.ヴィーガンで不足しやすい栄養素と代替源

動物性食品を食べないヴィーガン食では、たんぱく質をはじめとする様々な栄養素の不足が懸念されます。ここでは、不足しがちな栄養素とその栄養素が不足した場合のリスク、植物性食品で補う場合の供給源を解説していきます。
| 栄養素 | 主な働き | 不足時リスク | 植物性の主な供給源 |
| たんぱく質 | 筋・臓器・酵素の材料 | 筋力低下・免疫力低下 | 大豆製品、レンズ豆、ひよこ豆、テンペ、セイタン |
| ビタミンB₁₂ | 赤血球合成・神経保護 | 巨赤芽球性貧血・神経障害 | 強化植物ミルク、B₁₂強化シリアル、サプリメント |
| 鉄(非ヘム) | 酸素運搬 | 鉄欠乏性貧血 | レンズ豆、白いんげん、ほうれん草、モラセス |
| カルシウム | 骨・歯の構成 | 骨粗鬆症 | 強化豆乳・アーモンドミルク、ケール、チアシード |
| 亜鉛 | 免疫・味覚 | 免疫低下・味覚障害 | ひまわりの種、かぼちゃの種、全粒穀物 |
| ω-3脂肪酸(ALA) | 抗炎症・脳機能 | 皮膚炎・認知機能低下 | 亜麻仁・チアシード・えごま油 |
| ヨウ素 | 甲状腺機能 | 甲状腺腫 | 焼き海苔・昆布だし(※過剰摂取も注意) |
ポイント
ビタミンB12は植物性食品にはほぼ含まれないため、「強化食品」や「サプリメント」での補給が必須です。
また、植物性食品に含まれる鉄である非ヘム鉄は、動物性食品に含まれるヘム鉄に比べ吸収率が低いので、ビタミンCを含む食品と一緒に摂取することが望ましいです。
- B₁₂は植物性食品にはほぼ含まれないため、“強化食品/サプリ”が必須。
- 非ヘム鉄は吸収率が低いので、ビタミンCを一緒にとると効率UP。
3.栄養バランスを整える 5 か条

植物性食品のみでも栄養バランスの整った食事の摂取をするために、覚えておくといいポイントを5か条にまとめました。
1.豆・豆製品を毎食ベースに: 大豆ミート・テンペ・豆腐で1日たんぱく質60 g目標。
2.全粒穀物+ナッツ&シード: 亜鉛・鉄・マグネシウムを底上げ。
3.彩り野菜&果物でビタミンC: 非ヘム鉄の吸収を高める“助っ人”。
4.強化食品を賢く利用: Ca+B₁₂入り植物ミルクや朝食用シリアルを常備。
5.ALAリッチオイルを仕上げに: 亜麻仁油・えごま油を非加熱で小さじ1。
4.1 日モデル献立(約2,000 kcal/たんぱく質75 g)

| 食事 | メニュー | 栄養ハイライト |
| 朝 | レシピ① レンズ豆とアボカドのメキシカンラップ + B₁₂強化豆乳ラテ | たんぱく質20 g/鉄5 mg/B₁₂2 µg |
| 昼 | ひよこ豆とケールのキヌアボウル + えごま油ドレッシング | Ca 250 mg/ALA 1.2 g |
| 間食 | 焼き海苔&アーモンドバターのライスクラッカー | ヨウ素・亜鉛 |
| 夕 | レシピ② テンペと彩り野菜の黒酢炒め + 玄米100 g | たんぱく質25 g/ビタミンC |
| 就寝前 | Ca・B₁₂強化オーツミルク 200 mL | Ca 240 mg/B₁₂2 µg |
5.管理栄養士おすすめ! ヴィーガンの必須栄養バランスメニュー
レシピ①:カボチャのアーモンドミルクスープ

<材料(2人分)>
- カボチャ 200g
- 玉ねぎ 80g
- バター 5g
- 水 100ml
- アーモンドミルク 200ml
- コンソメ 小さじ1
- 塩 少々
- アーモンドスライス 適量
<作り方>
1.カボチャの皮をむき、種とワタを取り除いておきます。
2.カボチャを一口大に切ります。
3.玉ねぎをスライスします。
4.鍋にバターを入れて中火で加熱し、バターが溶けたら3の玉ねぎを入れてしんなりするまで炒めます。
5.玉ねぎがしんなりしたら、2のカボチャと水を入れ、カボチャが柔らかくなるまで弱火で煮込みます。
6.カボチャが柔らかくなったら粗熱をとり、アーモンドミルクを½量入れてミキサーやハンドブレンダーでなめらかになるまで攪拌します。
7.6を鍋に戻し残りのアーモンドミルクとコンソメを加え、なべ底からかき混ぜながら温めます。
8.最後に塩で味を整え器に盛り付け、アーモンドスライスを散らしたら完成です。
<POINT>
カボチャの甘味とアーモンドミルクの香ばしさが合わさったおいしいスープです。
ビタミンCが豊富なカボチャと、ビタミンB12やビタミンE、カルシウムが多いアーモンドミルクを一緒に摂取することで吸収率のupが期待できます。
レシピ②:キャロットラペ

<材料(2人分)>
- にんじん 100g
- レーズン 25g
- 酢 大さじ1
- オリーブオイル 大さじ1/2
- 砂糖 小さじ1
- 塩 少々
<作り方>
1.にんじんを千切りにします。
2.1とレーズン、酢、オリーブオイル、砂糖をボウルに入れ混ぜあわせ、冷蔵庫で味がなじむまで冷やします。
3.全体に味がなじんだら、塩で味を整え器に盛り付けたら完成です。
<POINT>
にんじんはβ-カロテンをはじめ、ビタミンB1、ビタミンB2、鉄分など多くの栄養素を含んでいます。このレシピは、火を使わず作ることができる上、作り置きができるので、ぜひ活用してみてくださいね!
レシピ③:高野豆腐と枝豆の煮物

<材料(2人分)>
- 高野豆腐 2枚
- 人参 30g
- むき枝豆 20g
- だし汁 300ml
- 砂糖 大さじ2
- 薄口醤油 大さじ1
<作り方>
1.高野豆腐を水で戻す。戻したら、含んだ水分を手で絞り食べやすい大きさに切る。
2.人参を輪切りに切る。
3.だし汁と調味料を合わせ、切った人参を加え沸騰させる。
4.沸騰した煮汁に高野豆腐を加え、中火で煮汁が鍋底に少し残るくらいまで煮る。
5.火を止めてから、むき枝豆を加える。
<POINT>
枝豆は「大豆が黄色く熟す前の、若い豆」で、野菜の「ビタミン・ミネラル類・食物繊維」と、大豆の「植物性のたんぱく質」を併せ持つ、とても優秀な食品です。そんな枝豆と高野豆腐を一緒に煮た彩りの良い1品に仕上げました。
6.まとめ
ヴィーガン食では、ビタミンB12、鉄、カルシウム、ω-3脂肪酸の摂取を最優先に考え、計画的に摂取することが必要です。今回ご紹介したレシピでは、強化食品+豆・全粒穀物+ナッツ/シード+海藻の“4本柱”で必須栄養素を網羅したものとなっています。植物性食品だけでも“抜け”のない栄養バランスを実現し、心身ともに健やかなヴィーガンライフを送りましょう!
監修管理栄養士/元木理沙

大学卒業後、老人保健施設の厨房栄養士として勤務。その後、管理栄養士の資格を取得し、保健所にて離乳食教室や幼児健診、地域の食育のためのレシピ作成等に従事。現在は、「健康的に痩せる」「しっかり食べて痩せる」をモットーにパーソナルジムに通う方の食事指導や特定保健指導を行いながら、レシピの作成・記事の監修に携わっている。