目次
1.はじめに
お腹のハリや便通の不調に悩む方の食事サポートに
過敏性腸症候群(IBS)は、腹痛や下痢、便秘などの消化器症状が慢性的に続く疾患です。はっきりとした原因がない場合が多く、生活習慣やストレスとともに、食事内容も症状に影響を与えることが知られています。
そこで近年注目されているのが、「低FODMAP(フォドマップ)食」です。FODMAPとは、小腸で消化・吸収されにくく大腸で発酵しやすい短鎖炭水化物のことで、IBS症状を悪化させる要因になることが分かってきました。
この記事では、管理栄養士が監修した「低FODMAP食」を取り入れたメニューをご紹介します。「いろんな薬を使っても症状が改善しない」という方は、日常の食事に取り入れやすく、IBS症状の軽減に役立つ一例としてご活用ください。
2.低FODMAP食とは?

FODMAPは、以下の4種類の糖質の頭文字をとったものです。
- Fermentable(発酵性)
- Oligosaccharides(オリゴ糖):玉ねぎ、にんにく、小麦など
- Disaccharides(二糖類):乳糖(牛乳・ヨーグルトなど)
- Monosaccharides(単糖類):果糖(リンゴ、はちみつなど)
- And
- Polyols(ポリオール類):キシリトールやソルビトール(人工甘味料、りんご、洋梨など)
これらを一時的に除去し、体調が落ち着いたら再評価しながら摂取量を調整していくのが「低FODMAP食」の基本です。一般的に腸にいいと言われる食品でも高FODMAP食品に分類されるものがありますので注意が必要です。
3.低FODMAP食のポイント
・野菜は葉物やナス、トマト、にんじんなどを選ぶ
・主食は米、そば(つなぎなし)、グルテンフリーのパンが基本
・タンパク源は肉・魚・卵・豆腐などFODMAPが少ないものを選ぶ
→中でも木綿豆腐は低FODMAP食品、絹ごし豆腐は高FODMAP食品に分類される。
・にんにくや玉ねぎは香りだけを油に移して使用
・牛乳の代わりにアーモンドミルクやラクトースフリー牛乳を活用
→ラベルに「〇〇糖」「乳成分」などの表記に注意。
4.管理栄養士おすすめ! 低FODMAPでIBS症状軽減メニュー
レシピ①:なすのそぼろ煮

<材料(2人分)>
- なす…3本(正味300g)
- 鶏ひき肉…100g
- ごま油…大さじ1
- だし汁…200ml
- しょうゆ 大さじ2
- みりん 大さじ2
- おろし生姜 小さじ1
- 小葱…お好みで
【水溶き片栗粉】
- 片栗粉…小さじ2
- 水…大さじ1
<作り方>
1.なすはへたを切って乱切りにし、水に5分ほどさらして、水気はきっておく。
2.ごま油を引いたフライパンになすを加えて炒め、だし汁を加え、ひと煮立ちさせる。

3.②に鶏ひき肉を加え、肉の色が変わるまでほぐす。おろし生姜、しょうゆ、みりんを加えてさらにひと煮立ちさせる。

4.煮立ったら、アクをとり、水溶き片栗粉を加えてとろみがつくまで混ぜ合わせる。
5.器に盛り、小葱を散らす
<POINT>
・夏から秋にかけて旬を迎える「なす」を使った1品です。
・お好みでジャガイモやかぼちゃなどにしてもおいしくいただけます。
レシピ②:簡単♪包まないピーマンオムレツ

<材料(2人分)>
- ピーマン 2個
- 卵 3個
- 塩コショウ 少々
- バター 10g
- モッツアレラチーズ 20g
(今回はピザ用のシュレッドタイプを使用しています)
<作り方>
1.ピーマンはお好みの大きさにざく切りにする。
2.ボウルに卵、塩コショウを入れてしっかり混ぜておく。

3.フライパンにバターを入れて、中火でピーマンを炒める。バターがなじむ程度にさっと炒める。

4.ピーマンはやや中央に寄せて、周りから②の卵液を流しいれる。

5.チーズを上からかけて、蓋をして2~3分。チーズが溶けて、卵も固まったら出来上がり。

<POINT>
・ピーマンはシャキシャキ感が残っているくらいがおすすめです。
・少し薄味なので、お好みでこしょうを振ったり、マヨネーズを上からかけて食べてもいいでしょう。
レシピ③:筍と人参の土佐煮

<材料(2人分)>
- たけのこ水煮 1P(正味150g)
- 人参 50g
- しょうゆ 大さじ2
- 砂糖 大さじ1+½
- みりん 大さじ1+½
- 水 180g
- 鰹節 10g
<作り方>
1.たけのこ水煮は、穂先と根元に分けて穂先はくし切り、根元は1㎝幅のいちょう切りにする。人参はいちょう切りにする。
2.にしょうゆ、砂糖、みりん、水を入れて、中火にかける。

3.煮汁がふつふつと沸いたら、①で切ったたけのこと人参を入れて5~6分煮る。

4.鰹節を入れてさらに5分火にかけ、煮詰めて器に盛り付ける。

<POINT>
・たっぷりの鰹節からだしが出るのでだし汁は必要ありません。
・作り置きとして作り、温め直すとより味が染みておいしいですよ。
5.管理栄養士からのワンポイントアドバイス
IBSの症状は個人差が大きく、「これなら安心」という食品も人によって異なる場合があります。そのため、低FODMAP食は一時的に取り入れ、症状が改善された後は段階的に制限を緩めることが大切です。おなかの調子がすぐれないと、何を食べればいいのか迷ってしまい、気づかないうちに栄養が偏ってしまうこともあります。必要に応じて医師や管理栄養士に相談しながら進めることで、無理なく継続できる食生活を見つけていきましょう。

今回紹介したメニューは、FODMAPに配慮しながらも、ご家庭で手軽に揃えられる食品を使ったレシピです。家族みんなでおいしく楽しめるので、ぜひ本日の食卓に1品取り入れてみてください。おなかの不調が少しでも和らぎ、毎日の食事がより快適になるお手伝いになれば幸いです。
監修管理栄養士/竹﨑千尋

大学卒業と同時に管理栄養士資格を取得。腎臓病や透析患者への栄養指導を通じて予防医療の重要性を実感。現在は健診センターで健康相談や特定保健指導を担当し、N-partnerではオンラインでの栄養支援も行い、“これからの健康を支える栄養士”を目指して活動中。
栄養士の傍ら、主人の農業にも従事し、日々食の大切さを実感している。