目次
1.はじめに
年齢とともに筋力や体力の低下を感じている方も多いのではないでしょうか?
その背景には、加齢に伴う筋肉量の減少=「サルコペニア」の進行が関係しています。
サルコペニアは転倒や寝たきり、要介護のリスクを高めることから、早期からの予防・対策が大切です。
本記事では、シニア世代の健康寿命を支える「サルコペニア予防のポイント」と、実践しやすいレシピをご紹介します。
2.サルコペニアとは?どんな人に多い?

**サルコペニア(Sarcopenia)**とは、加齢により筋肉量・筋力・身体機能が低下する状態を指します。
主に以下のような方に起こりやすいとされています。
- 65歳以上の高齢者
- 運動習慣が少ない方
- 食事量が少なく、特にたんぱく質の摂取が不十分な方
- 持病や慢性炎症、入院等で活動量が低下した方
日本では75歳以上の約50%がサルコペニアのリスクがあるとされており、健康寿命延伸の観点からも重要な課題です。
3.予防・改善のための食事のポイント
1. たんぱく質をしっかりとる

筋肉を構成する主成分であるたんぱく質は、毎食20〜30gの摂取が理想です。また、たんぱく質はアミノ酸に分解されて体内に吸収されますが、アミノ酸の中でも筋肉の保持や増量に重要なのが分岐鎖アミノ酸(BCAA)です。BCAAとは、アミノ酸の種類であるバリン、ロイシン、イソロイシンの総称です。これらは必須アミノ酸と言います。体内では合成されず、食品からの摂取が必要となります。特にロイシンは筋肉の合成に深く関与し、運動をすることで効率良くたんぱく質合成を促進します。
加齢により、栄養や運動による筋肉の合成には多くのたんぱく質を摂る必要があります。日頃からたんぱく質を多めに取ることを意識しましょう。
シニアでは吸収効率が落ちるため、意識して多めに摂取しましょう。
おすすめ食材:肉、魚(マグロ、カツオ、アジ、サンマ)、卵、大豆製品、乳製品
2.ビタミンDで筋力維持をサポート

ビタミンDは、筋肉の機能やバランス感覚にも関与しています。
骨の健康とも関連が深く、魚介類やきのこ類の摂取がおすすめです。
3.エネルギー不足に注意
たんぱく質をとっても、エネルギー(カロリー)が不足していると、筋肉の分解が進んでしまいます。
主食や油脂類も適度にとり、バランスを整えましょう。
また、果物や高カロリーゼリーを補食としてうまく使いながら、エネルギーを補うことも大切です。
4.管理栄養士おすすめ! シニアのサルコペニア予防メニューレシピ
レシピ①:鶏むね肉のネギ胡麻だれ

<材料(2人分)>
- 鶏むね肉 1枚(300〜350g)
- 片栗粉 大さじ1(9g)★
- 下味用塩 ひとつまみ ★
- 長ネギ 1本(60g)・・・みじん切りにしておく
- ごま油 大さじ2(24g)
- 砂糖 小さじ2(6g)△
- 顆粒鶏がらスープもと 小さじ1(2.5g)△
- 醤油 小さじ2(12g)△
- 酢 大さじ1(15g)△
- いりごま 小さじ1(3g)
<作り方>
下ごしらえ
- 鶏むね肉を一口大(約20〜30g)に切る
- 長ネギはみじん切りをしておく
- ポリ袋に1と★を入れて袋の中で混ぜる

4.フライパンにごま油を入れ3を揚げ焼きする(蓋かアルミで落とし蓋をすると火の通りが早い)


5.鶏むね肉に火が通ったら一度フライパンから取り出す

6.残った油で長ネギを炒め、すぐに火が通り始めてとろっとしてくるので△を入れる。


7.長ネギと△が馴染んできたら、鶏むね肉を入れてフライパンで混ぜ合わせる
8.いりごまを加えて全体をよく混ぜて完成
<POINT>
・高たんぱく質の鶏むね肉は片栗粉にまぶして揚げ焼きにして、しっとり食感に
・フライパン1枚で完結するメニュー、洗い物は少なめ
・付け合わせを生野菜にして、ネギ胡麻ダレをかければ野菜も進む
レシピ②:鰹のニラえのきがけ

<材料(2人分)>
- 鰹刺身用 12枚(200〜250g)
- ニラ 1/2束(3〜4センチに切る)
- えのき 1/2(3〜4センチに切る)
- ごま油 小さじ2
- 醤油 小さじ2 △
- みりん 小さじ1 △
- 酒 小さじ1 △
- 水 20cc △
<作り方>
1.ごま油を引いて、えのきを炒める
2.△をフライパンに入れて煮る
3.煮詰まったらニラを入れて軽く炒める

4.鰹を盛り付けて、上から3をかけて完成
<POINT>
- きのこのビタミンDは魚に含まれるカルシウムの吸収を効率よく行い、丈夫な骨と筋肉を作る
- 鰹は良質なたんぱく質でかつ分岐鎖アミノ酸を多く含む
- 20分以内でできるスピードメニュー
レシピ③:ミックスビーンズのサラダ

<材料(2人分)>
- ミックスビーンズ 50g
- ミニトマト 6個(4等分に切る)
- ブロッコリー 小房を4〜5こ
- プロセスチーズ(ベビーチーズ) 28g(1センチ角に切る)
- ハーブ(パセリ、オレガノ、バジルなど)
- オリーブオイル 4g(小さじ1)
- 塩 0.5g(ひとつまみ)
<作り方>
1.ミニトマトは4等分に切る
2.ブロッコリーは小房に分けて、沸騰状態の湯で3〜4分煮て冷ましておく
3.プロセスチーズは5mm〜1cmの角切りにする

4.調味料も含めた材料を全て混ぜ合わせて完成

<POINT>
- 切った材料を合わせるだけのシンプルメニュー
- ミックスビーンズとチーズで良質なたんぱく質を摂ることができる
- オリーブオイルをごま油に、塩を鶏がらスープの素1gに変えると中華風に
☆管理栄養士からのワンポイントアドバイス
サルコペニア対策では、「毎日の継続」がカギです。
朝・昼・夕すべての食事でたんぱく質を意識することが、筋肉を守る第一歩。
シニア世代では、消化吸収機能が低下するため、食事の増量が難しい方もいます。たんぱく質を強化した食品もドラッグストアやコンビニで販売されています。そのような商品も取り入れながら、日常のたんぱく質の摂取量を増やしてみましょう。
また、運動(特に下半身の筋トレ)との併用で、より効果的な予防が可能です。
特に**「噛む力」や「飲み込む力」が弱くなってきた方**には、柔らかくて飲み込みやすい調理法も取り入れましょう。
5.まとめ

- サルコペニアは、シニア世代の健康寿命に直結する重要な課題
- たんぱく質・ビタミンD・エネルギーを意識した食事が予防の基本
- 消化吸収のよい食材・調理法を取り入れて継続を
- 運動と栄養バランスの整った食事で筋肉量を増やす
日々の食事が、将来の自立した生活を守る第一歩。
今回は高たんぱく質で優しい味付けで食べやすい、簡単なメニューを中心に紹介しました。ご紹介したメニューを取り入れて、バランスの良い食事を意識していきましょう。適度な運動もしながら、元気な毎日を目指しましょう!
監修管理栄養士/稲穂 智美

管理栄養士。給食委託会社で老健と急性期病院にて給食管理業務を経験。現在は保育園栄養士をメインに出張料理や特定保健指導、献立作成に関わる。
給食管理業務の経験を活かして健康的で美味しい食事の提案や個人や家庭ごとに寄り添った食事づくりや栄養相談を行っている。